車屋の開業でよくある失敗原因トップ5
車屋には様々な業態が存在します。たとえば、自動車整備工場、鈑金塗装工場、中古車販売店、チューニングショップ、カーディテイリングショップなどです。業態によって扱う車両や業務内容は異なりますが、開業して失敗する原因は共通しています。
今回は、車屋の開業における主な失敗原因を5つ紹介します。
第5位:ターゲットを狭めすぎた
ビジネス書などには「差別化が大事」と書かれていますが、それを意識して、他の車屋が選ばないような業態にするのはリスクが高いです。同業他社が選ばない業態は、そもそも需要自体が少ないと考えるのが妥当です。
たとえば、特定の車種や特定のカスタマイズだけを提供する業態などでは、あらかじめ市場調査を行い、ビジネスとして成立するだけの需要があるかを調査する必要があります。
第4位:安易に値引きしすぎた
開業当初は顧客が急に増えるわけではないので、友人や家族などの紹介で売上を確保する人が多いです。その際に、「後輩にはカッコいいところを見せたい」「定価だとリピートしてくれないかも…」などと考えて安易な値引きをするケースがよくあります。
これは短期的に集客効果を生むかもしれませんが、長期的には利益を圧迫し、経営を苦しくします。安売りが定着してしまうと、後から値上げしづらくなってしまいます。
そのため、どんなに親しい関係であっても値引きをしない方が良いでしょう。私も、自分が経営する車屋では兄弟や幼馴染であっても定価で請求しています。
第3位:集客スキルが不足していた
新規開業では、近隣住民に自社の存在を知ってもらうことが重要です。その際に必要になるのが、営業力またはマーケティング力です。この2つのうちどちらか1つは必須になります。
営業力に関しては、以前働いていた会社のツテを辿ったり、近隣にある車両保有台数の多い会社に飛び込み営業したりして仕事を取ってくる力が必要です。
マーケティング力に関しては、ホームページ・Googleマップ・中古車掲載サイトなどを活用して、自動的に集客を行える仕組みをつくる力が必要です。文章を書いたり、写真を撮ったり、アクセスを分析したりなど、地道で頭を使う作業です。
第2位:立地が悪かった
どんなに商品やサービスが良くても、立地が悪いと集客の難易度はグッと上がり危険です。立地に関してはやり直しがほぼ効かないので、事前の市場調査を必ず行なってください。
注意1:競合の少ないエリアは危険
「競合が少ないと顧客を独占できるので儲かる」と考える人もいますが、実際には違う場合が多いです。
競合の少ないエリアは、車屋の需要自体が少ないと考えるのが妥当です。私も友人から出店場所を相談されたら、「ある程度競合のいるエリアにした方がいいよ」とアドバイスしています。
注意2:賃料の安い物件は危険
「賃料の安い物件は経費を抑えられるので利益が出やすい」と考える人もいますが、これも違う場合が多いです。
物件Aと物件Bを比べてみましょう。
- 物件A:集客力が高くて賃料も高い
- 物件B:集客力が低くて賃料も低い
初期費用を抑えるために物件Bを選ぼうと考える経営者も多いですが、これは思わぬ失敗につながることがあります。これには「固定費」が関係しています。たとえば、毎月のリース代や保険料、水道光熱費といった固定費は、物件の賃料とは関係なくかかるため、賃料が安い物件を選ぶと、より利益が圧迫されやすくなります。
このように、賃料の安さよりも、しっかりと利益を出せる物件を選ぶことが大切です。
第1位:資金繰りを軽視していた
何よりも倒産に直結するのが、資金繰りの失敗です。
パターン1:開業資金が少なすぎた
開業資金はゲームに例えるならHP(体力)です。ゼロになったらゲームオーバーになります。初めての開業の場合は、どのような支出が発生するかも分かりませんし、ビジネスには想定外の支出がつきものです。そのため、十分な開業資金を確保してから開業しましょう。
業態ごとの開業資金の目安は以下の通りです。この金額を貯金と融資の合計額で集められると一安心です。もちろん、この金額を集められなくても始められますし、それで成功している方もいますが、相応にリスクは高まります。
- 出張整備士⇒200万円〜300万円
- 自動車整備工場(賃貸物件/車販なし)⇒600万円〜1,000万円
- 中古車販売店⇒1,200万円〜2,000万円
パターン2:在庫車両を抱えすぎた
在庫車両は資金繰りを悪化させます。たとえば、在庫車両が合計500万円分ある場合、これは500万円の現金が車両に姿を変えている状態であり、残った現金だけでやりくりする必要があるので資金繰りが苦しくなります。
そのため、車販や買取がメインではない場合は、資金繰りを安定させるために、余剰資金が潤沢に貯まるまでは車販を行わないという判断も有効です。
パターン3:売掛金が膨らみすぎた
個人顧客との取引とは異なり、法人顧客との取引では締め請求(売掛)が一般的です。締め請求とは、1ヶ月ごとの期間にまとめて請求書を発行して集金を行う方法です。
たとえば、50万円の売上が発生した場合、すぐに50万円の現金を回収できるわけではなく、通常は1〜2ヶ月後に回収できます。このような法人顧客が10社あれば、それだけで500万円の現金が未回収状態となり、回収までの間に売上500万円の元となった仕入れ部品等の支払い期限が到来して資金繰りが苦しくなります。
特に、車販や鈑金塗装などの高単価商材を扱う業態であれば、法人顧客への売掛総額を抑制することも検討したいところです。たとえば、取引先ごとに売掛の上限枠を設定したり、即金値引きを設定したりすることが有効です。
まとめ
今回挙げた5つの失敗原因を押さえ、あらかじめリスクを潰すことで開業を成功させることができます。